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「コンビニの行方は?」

(2019年11月29日)

コンビニの成長を支えてきたビジネスモデル、FC(フランチャイズチェーン)システムが岐路に立っている。

ファミリーマートは11月14日、本部の合意有無に関係なく、加盟店オーナーの判断で時短営業を認めると発表した。一方で、2020年3月より、24時間営業を継続する加盟店への支援金を引き上げる。セブン-イレブンも時短営業の実験を開始しており、こちらは本部の合意が必要だが、2020年1月に75店程度が対象になる見通しという。また、同年3月より、低収益の加盟店支援を手厚くするためにFC契約を一部改定する。

これらの動きは、人手不足の深刻化による加盟店の負担増と疲弊、また人口減や競合店増などを要因とする収益の伸び悩みが背景にある。年中無休・24時間営業を軸に拡大成長を続けてきたコンビニのFCシステムが、従来のように機能しなくなる可能性があることを示唆していると考えることができる。

コンビニと言えば、かねてより、北海道を地盤に1186店舗を展開(2019年10月末現在)するチェーンストア、「セイコーマート」に注目している。北海道内で業界最大手のセブン-イレブンを上回るNo.1の店舗網を構築していることに加え、サービス産業生産性協議会が実施する「日本版顧客満足度指数(JCSI)」コンビニエンスストア部門で、全国のコンビニチェーンを抑え、2016年から2019年まで4年連続で1位を獲得している異色のコンビニである。

このセイコーマート、FC契約における営業時間は7時-23時の16時間営業を原則とし、加盟店舗ごとの状況を踏まえて柔軟に設定できるようになっており、24時間営業している店舗は全体の20%強しかない。しかも、一般的にコンビニの出店には商圏人口3000人が必要と言われる中、人口1000人以下の過疎地を含め、道内ほぼ全域の市町村に出店しており、人口カバー率は99%を超える。さぞかし数字は厳しいのだろうと思いきや、売上は右肩上がりには伸びていないものの、2015年以来1800億円台を堅持し、概ね横這いで推移している。人手不足や人口減少といった逆風は都市部と変わらない、いや、むしろより厳しい環境にもかかわらず、なぜこのような柔軟な経営ができるのか。ビジネスモデルを調べてみると、大手チェーンとは異なる面白い特徴が浮かび上がる。

まず、セイコーマートは総店舗の約8割、900店以上を直営店として運営している。高齢化で後継者のいない加盟店を引き継いだことなどで直営の割合が徐々に高まったらしい。8割が直営であれば、地域事情に合わせた営業時間や投資、新商品導入など、様々な面で本部主導による効率的な運営が可能になる。つまり、セイコーマートはFCチェーンからレギュラーチェーンに移行することで、成長を描こうとしている。

次に、商品を仕入れて売るだけでなく、製造、物流、小売と一貫したサプライチェーンを自ら構築している。店内には、道産の原料を使った弁当、総菜、牛乳、パン、加工食品などのPB(プライベートブランド)があふれている。自社農場、パッケージ製造や充填包装までを行う生産工場、そして自社物流を繋げ、ローコストかつ最も効率的なかたちで店舗に商品を届ける。いわゆるSPA(製造小売業)である。直営店主体の経営の場合、通常は加盟店からのロイヤリティ収入があてにできず、投資や人件費なども本部負担となるため、ローコストオペレーションの確立が必須。セイコーマートはSPAを追求することで、コスト管理を徹底している。

ちなみに、セイコーマートは2000年から、ポイントが貯まり値引きに使える会員制度「セイコーマートクラブ」を展開し、480万人を超える会員顧客の購買データを分析してきた(現在は2018年10月より開始したハウス電子マネー、Pecomaに移行中)。この、精度の高いデータ分析が、緻密なサプライチェーンの起点となっていて、チェーンストア運営の「鍵」の部分と考えられる。なお、データ分析はKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)として「リピート率」を非常に重視しているというが、実際にどのデータを組み合わせてどのようにその意味合いを読み取り、解を導き出しているのか大変興味深いところである。

さらに、小売事業では北海道だけでなく、茨城県や埼玉県にも進出し、またグループの製造会社を通じて加工食品などのPBを他のドラッグストア等に供給するなど、事業の拡大展開と収益の多角化も進めている。グループの外販比率は全体売上の1割に達するという。

今後さらに高齢化や人口減が進み、コンビニを取り巻く環境が一層厳しさを増すことが 想定される中、コンビニ各社は店舗経営を続けられない加盟店をどうするのか。経営資 源が目減りすれば成長は見込めず、自ずと何らかの打ち手が必要になる。セイコーマートのような、直営化やSPA化がすべての答えではないにせよ、購買データ分析を起点としたサプライチェーンの構築による顧客ロイヤルティの作り方や、本部主導の店舗運営手法など、同社の取り組みは今後の打ち手を模索する上で一考に値するのではないか。

岡道裕(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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