コラム > 2019年5月

「米国の最先端リチウムイオン電池開発スタートアップ25社を公開」

(2019年5月27日)

弊社はEV(電気自動車)の走行距離と低価格化を実現するためのコア製品である、リチウムイオン二次電池の技術開発を進めている米国(一部欧州)のスタートアップ25社の詳細なリストを調査・作成した。弊社から皆様に、“令和記念プレゼント”として無料で提供させて頂く。

ダウンロードして頂ければお判りになると思うが、このリストは、EV向けリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を大幅に向上させる技術を持つ、現在最もホットなスタートアップ群と言えるだろう(もちろんリスト上の25社がすべてではないが)。記載した企業は、現行の液体型リチウムイオン二次電池に加え、全固体・半固体タイプ、電極材・活物質、IP/ライセンス関連企業。注目して調べた項目は、各企業が有する重量/体積エネルギー密度(Wh/kgやWh/L)向上のための独自技術、ロードマップ、技術の開発元、資本関係、サンプル・試作ライン状況など。

もともと弊社は、自動車メーカーのEV戦略や蓄電池システムを調査分野として重視してきた。これまでに多くの個別調査を実施してきたほか、複数の書籍を発行してきた経緯がある。今回皆様に提供させて頂くリストは、EV開発企業や電池製造開発企業、電池材料メーカーだけでなく、家電メーカー、化学品メーカー、投資会社関係者などの方々が、今後の提携やM&A、研究開発、投資の際の参考になると確信している。


注目はMaxwell、CCDC陸軍研究所、Innolith、NanoGrafの4社・団体

リスト作成過程で、気になった要注目企業と概要は4つある。

一つめは、高い容量と乾式電池電極の技術を持つ 米Maxwell Technologies社。電池のエネルギー密度を大幅に向上させ、製造コスト削減に大きく寄与する技術を持つ。同社は今年5月16日、イーロン・マスク氏率いる米EVメーカーの旗手、テスラに買収されることが決まっている。同社の技術は電極技術にある。この技術を現状207〜250Wh/kgの性能を誇るパナソニック製セル電池に適用すれば、重量エネルギー密度を300Wh/kgはおろか、500Wh/kgの達成にも目途を付けられることになる。

二つめはスタートアップではないが、米CCDC陸軍研究所(ARL)が開発した、全く新しいカソード化学に基づく密度向上技術。この5月8日にNature誌に発表されたばかりであり、過去10年の電池化学技術の中で最も創造的と評価されている。これは、遷移金属を完全に含まずLiイオンを高電位(〜4.2 V)で可逆的な貯蔵を可能にするもの。業界第一人者と評されるJeff Dahn氏(加ダルハウジー大学教授)も認める技術で、「塩水電解質(WiSE)」の開発と組み合わせると460 Wh/kgのエネルギー密度を達成する。水性電解質のため安全な点も評価が高い。

三つめは、リスト掲載企業の中では最も高いエネルギー密度を公表しており、ダークホース的な存在のInnolith社(スイス)。化学変換アプローチで1000Wh/ kgものエネルギー密度を持つ。既にいくつかのブレークスルーを達成したことも保証している。3〜5年後に欧州でパイロット生産が予定されている模様だ。

最後は、米NanoGraf Corporation社。シリコン系負極を開発テーマにしている企業は多いが、同社だけが「収益を上げているらしい」というのがその理由。基本的には他社と技術面の大きな差は見られないものの、Amprius社、Nexeo社、SiNode社など、他は現状ではすべて赤字の状態で奮闘している。

EVや電池関係者の方々には釈迦に説法だが、EV用の電池開発は非常に重要な局面を迎えている。液体から半固体、全固体といったエネルギー密度向上に向けたしのぎ合いが激しさを増すとともに、リチウムやコバルトといった二次電池に不可欠なレアメタルの最大産出国である中国が、米中貿易摩擦の一環として「輸出制限」をほのめかすかのような動きを見せ始めたためだ。

目が離せないEV用リチウムイオン次世代二次電池市場。今回のリストはあくまで「リスト」でしかないが、活用法は多彩と思う。また、もっと広範な情報や、より“深い”情報などが必要な方がおられたら、ご遠慮なく相談頂きたい。

宮嵜清志(株式会社テクノアソシエーツ 取締役 副社長)

「リチウムイオン電池開発スタートアップ リスト」
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