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「HVが増えれば電池屋が儲かる?」

(2019年4月25日)

政府・経済産業省は、2030年のクルマの燃費を2020年目標比で約3割の改善を義務化することを決定した。それに先立つ今月3日、自動車大手のトヨタ自動車はハイブリッド車(HV)の特許(正確には特許実施権)のべ約2万4000件を無償提供することを発表した。今回のコラムでは、これらのニュースの影響をそこはかとなく考えてみたので、読者諸兄の皆様と共有してみたい。

本コラムの題名はもちろん、日本人なら誰でも知っていることわざ「風が吹けば桶屋が儲かる」をもじったもの。HVは相当量の電池を搭載するから、「HVが増えたら電池屋が儲かるのは当たり前だろ!」とツッコミたくなった方も多いかもしれない。ただ、ここで言う「電池」はリチウムイオン電池などの蓄電池(二次電池)だけに留まらないのでは?というのが、筆者の妄想のキモである。なぜか? もう少し具体的にご説明しよう。

まず、今回の燃費向上義務とHV特許無償提供によって、少なからぬ自動車メーカーが、トヨタ方式のハイブリッド技術を一部または全部採用しHVを開発、販売することになるだろう。言うまでもなく、クルマの電動化が自動車産業全体で一段と進むはずだ。HVだけでなく、より多くの電池を搭載し外部からの充電もできるプラグインハイブリッド車(PHEV)も増加するだろう。規模の経済によって電池コストが下がれば、電気自動車(EV)の価格も下がるので、EVももっと増加する可能性が高い。

PHEVやEVが増えると当然、充電スタンドの需要もさらに増える。一方、車両の電動化加速によって平均燃費がグンと良くなるためガソリンや軽油など化石燃料の需要はさらに落ち込む。つまり、ガソリンスタンドの斜陽化や淘汰も一層加速する可能性が高い。東京のような大都市圏ならともかく、地方ではいわゆる「ガソリンスタンド難民」の増加に拍車がかかりそうだ。そうすると「自宅で充電できるクルマじゃないと不便だよね」ということで、車両の電動化もさらに加速することになる……

電池の話に戻る。充電スタンドが増えると系統からの電力供給は増加するが、同時に太陽電池や燃料電池を充電スタンドに併設する場合も増加するだろう。なぜなら、せっかくPHEVやEVに乗るのであれば、消費する電気もクリーンな電力を使いたい、と多くの人が思うだろうからだ。少なくとも筆者はそうだ。せっかくのEVやPHEVなのに、石炭など化石燃料を燃やして作った「ダーティな電気」で充電するのでは意味が無いと考えるからである。
最も分かり易いのは、現在EVやPHEVに乗っている方のご自宅ではないか。調査した訳ではないが、EVやPHEVを所有し一戸建ての住宅に住んでいる方なら、恐らく太陽光発電システムや「エネファーム」(燃料電池)も導入済みである割合が高いのではないかと思う。固定価格買取制度の効果もあり、太陽光パネルも以前と比べると大幅に安くなった。

つまり、HVの増加は蓄電池だけではなく、「電池三兄弟」すべての需要底上げに繋がると推測している。もちろん、こういった分散電源があちこちで増えれば、それを制御するためのシステムやプラットフォーム、ビジネスモデルも増える可能性が高い。ブロックチェーンを活用した電力のP2P取引や、モビリティのシェアリングエコノミーも活発化するだろう。結果的に、HVの増加がスマートグリッド化・スマートシティ化も加速すると筆者は見ている訳だ。

当たるも八卦、当たらぬも八卦だが、筆者の妄想が正しかったかどうかは、今から10年後か、遅くとも20年後には明らかになるのではないだろうか。

大場淳一(株式会社テクノアソシエーツ プリンシパル)

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