コラム > 2019年2月

「業績予想を下方修正したAppleの真の危機」

(2019年2月28日)

2019年1月、Appleは2018年10月〜12月の売上高見通しを当初の890億ドル‐930億ドルから840億ドルへ5%〜10%引き下げた。10年以上業績を拡大し続けたAppleが、12月31日に終了したばかりの四半期業績の見通しを、このタイミングで修正することは異例のことである。マスコミは「iPhoneの販売減速」、「iPhone売上が米中貿易摩擦で減速」、「iPhoneより安い中国メーカーの台頭」、「飽和するスマートフォン市場」など原因分析を含め、業績予想の下方修正を一斉に報じた。「アップルの終焉」といった衝撃的な見出しを掲げた記事もあった。

この出来事が示すように、iPhoneの売れ行きがAppleの業績を大きく左右する生命線であることは間違いない。しかし同社にとって、それ以上ともいえる危機が存在しているように思われる。Appleを牽引してきたSteve Jobs氏が亡くなって、すでに7年余りが経過している。その間、Appleから画期的な新製品が登場することはなかった。もちろん、最近業績を伸ばしたてきたApple Watchや、話題を集めるApple Carはある。しかし、これらの製品は、生前にSteve Jobs氏が仕込んだものだ。いわばSteve Jobs氏の遺産と言える。Appleは常に革新的な技術、製品によってユーザーを魅了し、業績を伸ばしてきた。古くはアイコン、マウス、iMac、iPod、タッチパネルなど。Steve Jobs氏が無くなって以降、Appleからは革新的な製品が生まれていない。

GAFAの特許を調べてみると他の3社と比較して、AIや音声アシスタントなどの最新技術分野でAppleの特許出願件数の低さが目立つ。もちろん、特許は技術開発に対する企業の意欲を測る一つの指標に過ぎない。しかし、AppleがiPhoneの販売拡大に追われ、もし最先端技術の開発に手が回らなくなっているとすれば、革新的な製品を生み出すAppleの遺伝子が失われることになろう。Appleの真の危機はそんなところにあるのかもしれない。

宮崎信行(株式会社テクノアソシエーツ シニア・アドバイザー)

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