コラム > 2019年1月

「コングロマリット・ディスカウントとデジタル化」

(2019年1月31日)

2018年は海外企業を中心にコングロマリット・ディスカウントが盛んに検討されてきた。2019年は、さらにこのトレンドに拍車がかかる見込みである。ダウ・デュポンやGEをはじめ大企業が会社分割の準備を進めたり、実際に分割が行われた。ソフトバンクの電話事業もこの種の一つと解釈できる。

コングロマリット・ディスカウントとは、一つひとつの事業は魅力的であるにもかかわらず、複数の事業を統合することにより全体としての価値が下がってしまうことを意味している。

投資家にしてみれば、不必要な事業として足かせに感じたり、全体の価値を評価するのを難しくさせたり、株価の大幅な上昇が見込み難いと感じたりするからだろう。リスクの観点では安定度は減少する点はあるが、リスク分散は自分のポートフォリオ内で行えば良いだけである。

有望な成長事業を持っている大企業では、経営側がより多くの資本を受け入れる立場としての必用性から、今後もこうした取り組みが進むだろう。大手電機メーカーなど国内大手企業でも、こうした議論が今後活発になるのではないか。

一方、全く別のトレンドも始まりつつある。それはデジタル化である。

デジタル化とは、別の表現をすると「データ化」であり、どのような既存事業でも、データ化し、可視化させ、そして効率化させる。もしくは新たなサービスを展開するといったことだろう。こちらも、各社が一生懸命取り組んでいる最中である。

しかし、仮に考察する対象をこの二つのテーマだけに限った場合、どう解釈すれば良いのだろうか?問題はこの二つのテーマは相反する性質がある。

デジタル化は、既存事業から得られる多くのデータを活用することで、単一の事業より、複数の事業、もしくは、より多くの顧客層を対象とし、より多くの情報源を得ようとすることでもある。ある事業で得られデータを活用して、別の事業に役立てるといったことなども考えられる。

では、いったいどちらのトレンドの方が大事なのだろうか。現在の株式市場ではコングロマリット・ディスカウントのようだ。コングロマリット・ディスカウントは、会社を分割するだけで良いため、結果が出やすい。一方、産業界ではIT業界を中心にデジタル化が検討されているが、各社試行錯誤の最中で、良い結果が出るにはもう少し時間がかかりそうだ。

2019年の展望を見る中で、こういった物差しで眺めてみるのも何かの参考になるのではないだろうか。

木村勲(株式会社テクノアソシエーツ プリンシパル)

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