コラム > 2018年7月

「産業構造の変化と技術の事業化」

(2018年7月31日)

技術革新の産業に与える影響が大きくなっている。

自動車産業はその代表例。CASE(つながるクルマ、自動運転、シェアリング、電動化)を切り口に自動車関連で新たな事業を興そうと、IT企業をはじめ、これまで異業種と思われた企業が多数参入してきている。

「自動車産業」というモノに注目した呼び方に代えて「モビリティ(移動)」という機能に注目した呼び方を使うことも増えた。今年1月、米国で開催されたCES(家電見本市)において、トヨタの豊田章男社長は「トヨタを、クルマ会社を超え、モビリティ・カンパニーへと変革する」と打ち出した。

これからのビジネスパーソンは、「自分の会社が属しているのは○○産業」といった考え方に囚われない方が良い。新技術を活用した異業種企業の参入で産業構造が変化したり、これまで異分野だと思われた領域で、新たな事業機会が生まれることがあるからだ。また製造業には「自分達は××を製造している会社」に止まらず、「××というモノを通じて社会にどのような価値を提供しているか」という考え方がより一層求められる。

そんな中、当社は事業開発に関わる調査・分析、コンサルティング、マーケティング支援を行っている。最近では、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)やDARPA(米国国防高等研究計画局)の研究開発動向などのモニターもしている。

技術を製品・サービス化し、事業として成功させることはもとより簡単なことではないが、やはり苦労されている企業が多いと感じる。おそらく社外に相談もできず、自社で悶々としている企業もあるだろう。

ここでは2点指摘しておきたい。

(1)技術オリエンテッドよりもニーズオリエンテッドな製品・サービス開発

技術者が「この技術がどのような分野で使えるか」を考えるよりも、顧客に対面し顧客の困りごとや欲求を知っている人間が、「解決できるのはどのような技術か?」と発想する方がうまく行くのではないか。吉見製作所という釣具メーカーが開発した形状記憶処理したワイヤーが「巻き爪治療に使える」と一部で評判になったことがある。メーカーにとっては思いもしない用途だったろう。課題に直面している人だからこそ必要な技術を見つけられる。

そのためには、技術者以外のビジネスパーソンにも技術に対するアンテナや感度が求められる。

(2)「技術的に優れた製品・サービス」だけでは不十分

アップルはiPod、iPhone、iPadといった画期的な製品を生み出しているが、技術的に優れた製品というだけで成功した訳ではない。iPodの場合はiTunesという音楽再生・管理ソフトを自ら開発してiPodを売れやすくした。iPhone、iPadではハードの技術情報を公開、誰でもアプリケーションを開発できるようにして、ソフト充実化による普及促進を図るという、別の方策を採っている。

事業としての成功には、良い製品を生み出す技術者の努力に報いる優れた事業戦略が必要である。

水野豊(株式会社テクノアソシエーツ ヴァイスプレジデント)

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