コラム > 2018年2月

「絶滅危惧種を食する消費行動を考える」

(2018年2月28日)

ニホンウナギの稚魚である「シラスウナギ」が不漁だ。今シーズンは、日本だけでなく中国・台湾などでも記録的な不漁となっているが、振り返れば、シラスウナギの不漁、ウナギの高騰は、ここ数年毎年のように報じられている。

気になってスーパーの売り場をのぞいてみた。以前より売場は小さくなっている印象は受けたものの、おいしそうな蒲焼が所狭しと並んでいた。冷凍品や輸入などを通じて調達しているのかもしれないが、一消費者としてウナギの購入に困ることはなさそうだ。

しかし2014年にニホンウナギは国際自然保護連合により絶滅危惧1B類に指定されている。それにも関わらず、ウナギは普通に売られ、食べられている。

消費行動に詳しい専門家が教えてくれた。

「年代により差はありますが、『絶滅して食べられなくなるなら、その前に食べておこう』と考える人が多いのも事実です。消費する人がいるから、漁業者も事業者もウナギの確保に奔走する。ウナギに限らず、マグロやサンマなど、資源枯渇が心配されている水産物も同じような状況です」。シラスウナギ不漁の原因は乱獲、生育環境の悪化、海流の蛇行など様々な原因が指摘されているが、底流にはこうした消費行動の影響があるといえる。

このままのペースでウナギを消費し続けたらどうなるか。価格の上昇だけでなく、ウナギが一生食べられなくなるといった結果で消費者に跳ね返ってくるだろう。環境保護と消費を持続可能にするにはどうしたらいいのだろうか?

そのヒントがパルシステム生協にありそうだ。同社は、首都圏を中心に食の安心・安全や環境問題に関心の高い消費者に支持されており、ウナギの資源枯渇に高い問題意識を持っている。2013年からウナギ商品の売上の一部を積み立て、ウナギの放流や生息地の保全に役立てる活動に取り組み、カタログやホームページなどで利用者に告知している。
関係者に聞いたところ、「売上の一部を寄付する取組自体は目新しくないが、『普段の買い物の延長で環境への意識を高めるきっかけになった』と利用者からの評判は上々。環境保護と消費を持続可能にするには、ただ漫然と消費するのではなく、日常の消費を通じて環境に対する責任感と自覚を持ってもらうことが近道になる。供給サイドの責任でもある」という。
商品の価格や味、見た目といった目に見える情報だけでなく、生態系に与える影響やリスクを考えてみる。身近な買い物を通じて、こうした認識を高めてもらうことが、消費行動に変化を促すスイッチとなりそうだ。

今後は、消費行動の変化を加速させ、国民全体にいかに浸透させるかが課題となるだろう。消費者庁は、人や社会・環境に配慮した消費行動を「倫理的消費」(エシカル消費)と定義し、調査研究を進めている。
2017年4月に公開された報告書によると、エシカル消費で先行する英国では、1980年代にその概念が誕生。消費者教育を通じて国民のリテラシーを向上させると同時に、市民団体・NGO等によるキャンペーン、ロンドン五輪といったイベントを絡め、国民運動として浸透を図っていったという。消費行動・価値観の変化は、企業活動に変化をもたらし、同国のエシカル消費市場は、2013年に780億ポンド(約12兆円)にまで成長した。
日本では、東日本大震災を機に被災地の産品を買う応援消費が増えるなど、「買い物を通じた社会貢献」の機運が高まったが、長続きしているとは言い難い。「資源を大切にしよう」「社会にいいことをしよう」という掛け声だけでエシカル消費は定着しない。地道だが継続的な教育を通じて消費者一人一人の意識を変え、国民運動としてエシカル消費を生活に根付かせることが求められる。

さてウナギである。これからもウナギをおいしく食べ、日本の食文化を継承していくことはできるのか?その答えは、供給サイドの取組とともに、我々一人一人の消費行動、価値観に委ねられているが、残された時間はそう長くないことだけは確かである。


笹木雄剛(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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