コラム > 2018年1月

「感情・情動サービスに刺激を受ける」

(2018年1月31日)

昨今、消費行動が「モノ志向からコト志向へ、モノの豊かさから心の豊かさへ」とシフトしていると言われている。メーカーは、モノ売りからサービスという新たな価値提供を通じて顧客接点を広げ、継続的な関係構築を模索している。

そこで、感情・情動を解析することで人の個性や多様性に対応したり、ある感情・情動を誘発させることで行動変容を促すような技術の研究やサービスの開発が企業や大学で進んでいる。これらの領域は、工学と心理学・認知科学の融合領域であり興味深い。

人工知能を活用した人の感情を読むペットロボットなどもその流れかもしれない。また、ここ数年で知名度が高まったバーチャルリアリティ(VR)技術も、こうした技術の一つ。VRというと、筆者も含めて一般的には実写映像をもとに三次元バーチャル空間を作る技術や、実世界とバーチャル空間を合成する拡張現実感(AR)技術を思い浮かべる。

しかし、例えば東京大学大学院 情報理工学系研究科の廣瀬・谷川・鳴海研究室では、視覚、聴覚以外にも触覚、嗅覚、味覚あるいは満腹感など感覚間の相互作用を利用して、これらの感覚情報を再現・提示し、体験させることができるインターフェース技術(クロスモーダルインターフェース)の研究にも取り組んでいる。その他VRを活用し、体験者の感情に影響を与えるようなシステムなども開発している。

感情・情動の計測技術の応用は、様々なサービスやマーケティングにおいて期待されているが、ヘルスケア分野もその一つ。例えば、先日参加したヘルスケア関連のシンポジウムで、「MIMOSYS」(Mind Monitoring System)というストレスチェックのスマートフォン・アプリ(Androidアプリ、テスト版)を体験した。実は筆者自身、ここ4カ月ほど原因不明の突発的な発熱に悩まされることが多く、「原因はストレスかもしれない」ということで、興味本位で試してみた。

このアプリの特徴は、ストレスのバイオマーカーとして「声」に着目している点。声には自然に情動が出る成分と意図的に言語を生成する成分が含まれているという。ストレスが加わるとその影響が声に表れるため、MIMOSYSはそれらの変化を客観的な指標で評価する。通話の声から元気の程度(元気圧)を測定し、2週間分の声から「心の活量値」として総合判定する。元気圧は、「LOW」「NORMAL」「HIGH」の3段階でメーター表示される。傾向を見て、疾患の予防に役立てる。遠隔利用ができ、日常会話、通話から自動判定するので、利用者の負担も軽い。

PST社(神奈川県横浜市)のPST(Pathologic condition analysis and Sensibility Technology: 音声病態分析感性制御技術)が利用されており、東京大学と日立システムズとの産学連携、神奈川県による実証協力により、社会実装を目指している。

さて、筆者の診断結果について。普段の通話では声に張りがある方だと自覚していた筆者だが、多少意識して発声してみたものの、結果はLOWの範囲を示した。念のためもう一度試してみたが、やはりLOWだった。今回は長期でデータを取っていないものの、ストレスの兆しありとして留意したい。

個人、家庭のみならず健康経営を推進されている企業でも利用いただきたい。お昼休みの時などに同僚との会話でぜひ。


池田英一郎(株式会社テクノアソシエーツ マネージャー)

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