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「下落進む太陽光発電コスト、コモディティ化の先にあるもの」

(2017年1月31日)

メガソーラーなど産業用太陽光発電で、発電コストの下落が急速に進みつつある。

この話題で最近よく見聞きするようになったのが、中東・アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビでスマートシティ「マスダール・シティ」を開発中のマスダール(Masdar)社だ。
2016年6月、ドバイのドバイ電力・水局(DEWA)の入札に対して、29.9ドル/MWh(2.99セント/kWh、円換算では約3.3円/kWh)で800MWのメガソーラー建設の受注を獲得して業界で話題となった。

その約2カ月後の8月には、南米・チリにおける120MWのメガソーラー・プロジェクトの競争入札で、スペインのソーラーパック(Solarpack)社が、29.1ドル/MWhと太陽光発電の最低コストで記録を更新した。

さらに、メガソーラーの発電コストで最安値を更新しそうなのが、他ならぬ日本企業も関与しているプロジェクトである。

2016年10月、UAEのアブダビでアブダビ水・電力会社(ADWEC)が募っていた350MWメガソーラーの入札において、丸紅と中国ジンコソーラーによるコンソーシアムが、24.2ドル/MWh(2.42セント/kWh、円換算では約2.7円/kWh)で応札し、最安の応札価格であることをADWECが明らかにした。

ADWECのメガソーラー案件はまだ受注契約まで完了していないとみられるが、太陽光パネルの品質、技術やサポートなどが競合と同等以上であれば、最安な価格を提示した丸紅・ジンコソーラーの連合が受注する可能性が高い。

ちなみに、ADWECの入札ではマスダール社も応札していたが、その発電コストは、25.33ドル/MWhで丸紅・ジンコソーラー連合にわずかに及ばず次点だった。

もちろん、内部収益率(IRR)などの指標で一定以上の利益を確保することは必要だが、今後はマスダール社などもより一層の低コスト化を図り、メガソーラー・プロジェクトの応札では価格競争に拍車がかかるだろう。

太陽電池や太陽光パネルの製造は、いわゆる「装置産業」である。

資金力のある企業は設備投資を敢行することにより、「規模の経済」による低コスト化が可能となる。今後、太陽電池や太陽光パネルの低価格化とコモディティ化がさらに進み、太陽光発電が誰でもどこででも可能となったとき、いったい何が起きるだろうか。

可能性があるのは、「電気のコモディティ化」だと筆者は想像している。

これまで日本では、電気は各地域に一社しかない電力会社と契約して買うのが当たり前だった。それが、2016年4月に始まった電力小売り自由化によって、地域差があるものの、基本的には新規参入した電力事業者を選んで契約することも可能となっている。

今後は、電力会社の選択の自由に加え、太陽光によって電気を自分で創ることもより一般的になるだろうし、スマートフォンや電気自動車の充電を無料で提供する店や施設ももっと増える可能性がある。

この1月に始動した米トランプ新政権は、化石燃料優先と、時代に逆行する感がある。化石燃料は採掘しつくしてしまえば枯渇するし、その前に供給が細れば価格の上昇は不可避になる。反面、太陽光による電力のコストは、太陽電池の量産によって今後も当分の間は下落する一方である。

太陽電池の原料となるシリコン(ケイ素:Si)は、地球上に潤沢にあり、ほぼ無尽蔵といってよい。経済合理性で太陽光が圧倒的な優位に立てば、タダで好きなだけ電気を使い放題、という日がそのうち来るかもしれない。

そうなれば、トランプ大統領も「再エネは高いからダメ」などといった時代錯誤なことを言ってはいられなくなるだろう。

大場淳一(株式会社テクノアソシエーツ プリンシパル)

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