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「今ひとたびの、ブルーオーシャン戦略」

(2016年5月31日)

ある企業の幹部との打ち合わせの途中で、普段さほど表情に変化がないその人が珍しく「そこに入り込めれば・・・ブルーオーシャンですよね」とニヤリと笑った。

ブルーオーシャン(戦略)。最近ほとんど聞かなくなった言葉で、実に新鮮だった。これは10年以上前に提唱された経営戦略論で、競合がいない未開拓領域を「(美しい)青い海」に例えたものだ。夢物語にも思えるが、確かにこれまでの調査や事業支援の経験の中で、「あ、これは行けるかも」と思ったことがある。

一つは、低タンパク米の東南アジアでの商品化。

低タンパク米は腎臓病や糖尿病など、タンパク質等の摂取量が制限される方々向けの製品である。数年前、日本の農産県の企業群が、従来の日本米(短粒種、ジャポニカ米)におけるコメ加工技術を、DNAが異なるインディカ米(長粒種)に応用することに成功した。
コメではなくこの「技術」を現地に持ち込み、現地でインディカ米を使った低タンパク米と、その応用食品(カップ米麺等)を流通させようというのだ。

なぜこれがブルーオーシャンに見えたのか。

ジャポニカ米を常食にしているのは、世界では日本を中心に約1億人。これに対してジャポニカ米は40億人。市場は一気に40倍に拡大し、競合がいない。私は途中でこのプロジェクトから離れたのでその後は不明だが、当時はタイで現地医療機関による実験が始まったところだった。

もう一つは、日本家屋や伝統建築で頻繁に使われる屋根部材。

ある懇親会の場で、周囲にいた企業経営者たちが「うちらの製品、東南アジアでガンガン売りたいねえ」と盛り上がっていたところに、私はつい「失敗するからやめた方がいいですよ」と断言し、話に水を差してしまった。住宅や建築物の構造手法が異なるうえ、そのような部材を使う習慣のない国に、自分たちの最終成果物(カタチとなった製品)がそのまま受け入れられるはずがない。

だが、その部材が放つ実に鮮やかな色彩が、「(自社開発した)1200度までの完璧な温度コントロール制御」を経て焼きあがった結果という話を聞き、見方が変わった。東南アジアには、そんな高度な技術は存在しなかったからだ(当時)。

「この温度コントロール技術こそ商品になる」と思った私は、すぐに思い付きを口にした。

「××(製品)の売り込みなど忘れて、この技術を武器に現地国の食品メーカーや流通企業とアライアンスを組んだらどうですか。作るのは例えば、“高温窯焼きピザ”の製造装置。
皆さんの技術を組み込んだ装置なら、市場を独占できる!」。

・・・誰も耳を貸さなかった。

だが今年に入り、800度(通常は500度)で焼く“超高温焼きピザ”が大流行し始めたことを知ると、少し残念感が残る。

まだまだある。

九州の自治体関係者が、糖度が極めて高いある野菜をタイ・バンコクの大手流通チェーンに持ち込んだ時のこと。

その現地企業のバイヤーは「なぜ日本の製品を売るために店舗の棚を空けねばならないのか。その技術を我が国の企業とともに当地の食物に応用し、互いにハッピーになるような提案はできないのか」と吐き捨てた(私もなぜか同席していた)。

ブルーオーシャンへの道は、いたるところにありそうだ。

そのキーワードの一つは、戦略の“トランスフォーム”にあると私は確信している。

そして弊社の仕事は、皆さんが真の「ブルーオーシャン」を探し当てるお手伝いをさせていただくことなのです。

宮嵜清志(株式会社テクノアソシエーツ 取締役副社長)

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